NO.112 迫り来る嵐(暴雪将至)

監督:董越
出演:段奕宏 江一燕 杜源
鄭偉 鄭楚一
2017 中国 119分
全編これ雨!雨!しかも冬の雨-舞台は湖南省衝陽の街で案外寒くはないのかもしれませんが、暗い、重い、しかし息もつかせぬ展開で迫ってきます。時は90年代後半、経済発展に向けて中国社会が激変していた時代、それまでの国営工場による経済文化が廃れ、不安の中でよりどころを失っていた人々の姿が描かれた本格サスペンス映画。
工場の保安担当、単純な正義漢で上昇志向派?に見える主人公が、近くで起こった連続殺人事件の犯人を追ううちにどんどん自分が追い詰められて、一緒にいた部下を死なせ、恋人にも自殺され、自身もストーカーのように狂気じみていく、迫真の段奕宏の演技・・そして最後に実はその事件そのものがあったのかどうかさえひっくり返すような、記憶の不確かさにまで迫る構成。そこに中国の90年代の問題を映し出すような社会的視点もからめます。中国版『殺人の追憶』などとも言われましたが、男性・非刑事側の『薄氷の殺人』という感じも・・・主役の段奕宏は2017年の東京国際映画祭では、それぞれ違った役柄で3本の映画に登場し大活躍でした。この映画で、主演男優賞を受賞。映画祭のQAに現れた素顔?はわりと「普通の」オジサン(オニイサン?)でした。
監督は自ら脚本も書き、この映画で長編デビューを果たしたドン・ユエ。ダイナミックなアクション、息もつかせ展開のエネルギーに圧倒されますが、一方主人公と愛する女性との絡みでは、主人公の不安や切なさもしっかり描き、実力を感じさせます。
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