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NO.107 妻の愛、娘の時(相愛相親)

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監督:張艾嘉(シルビア・チャン) 出演:張艾嘉 郎月婷 田壮壮 宋寧峰 李雪健 王志文 劉若英(レネ・リュウ)  2017台湾・中国 121分    高校のベテラン教師・岳慧英は母を亡くし、かつて田舎で葬られた父の墓を自分の住む町に移して母とともに葬ろうと考えます。 彼女は早速父の実家に改葬の交渉に赴き、村長に金を渡して墓堀りの段取りまでしてしまいます。ところが実家では父の最初の妻が墓を守っていて、墓を移し愛人と合葬することなど認めないと、墓の上に座り込み抵抗します。 実母を愛人扱いされた慧英は怒り、両親の正式な結婚を証明するために、ヒステリックと言ってもいいほどに髪振り乱し、役所を駆け回ります。いっぽう、田舎の元妻も同じように自分の結婚が正当なものであったと証明しようとします。 その間に立つのはテレビ局に勤める慧英の娘、薇薇。彼女はTVの企画として祖父の元妻に興味を持ち、取材をしようとたびたび訪ねるうちに心を通わせていきます。 娘、薇薇には歌手で、北京に行こうと考えている恋人がいますが、彼を家族に紹介することができません。家族に「したいことは必ずやり遂げる」と評されている母の期待や束縛に、娘は辟易としていますが、いっぽうで母の価値観を共有してもいて、恋人のもとに踏み出せないでいるのです。また、恋人と彼につきまとう(と見える)女友達の関係も気になり、置き去りにされそうな自分と、祖父の元妻とを重ねてしまったりもして、落ち着かない揺れる心で田舎に通うのです。                  ************             墓問題と母娘の相克と、けっこう深刻なテーマで、現代の中国の家族や社会の抱える問題を垣間見せるところもありますが、全体を覆うユーモアセンスが秀逸で、額に立てじわを寄せて必死でありながら、なんか笑いを誘うような言動をするヒロイン慧英の戯画化された描き方や、不器用ながら誠実に見守り、なだめる夫の漂々とした感じがうまく描けていて面白く、印象に残ります。 この夫を演じるのは、監督としてよりも味のある中高年を演じる役者として見ることが多くなった田壮壮。すっかり高齢化?した李雪健や王志文がワンシーン出演ですが、し...

NO.106   活きる(活着)

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監督:張藝謀             出演:葛優 鞏俐  郭涛      倪大宏 姜武   牛犇 1994 中国 131分 お待たせしました!長らくリクエストをいただきながら、なかなかご紹介できなかった『活きる』です。 この映画は、張藝謀監督や中国映画が世界的な評価を受ける嚆矢となった作品で、カンヌ国際映画祭審査員大賞、主演男優賞を受賞。当初、中国国内では政治的理由から上映禁止となっていました。 1940年代の国共内戦、三反五反運動、50年代の大躍進政策、60年代の文化大革命と、大きく3つの時代の政治的な出来事を背景に、庶民が政治や体制に翻弄されながら生きていく姿が描かれます。 40年代、賭博に身を持ち崩し、家屋敷も財産も失った福貴は、いったんは妻子に去られ、母とともに暮らしていましたが、気をとりなおし、相棒の春生とともに得意の歌を生かして影絵芝居の一座を作り巡業に出ます。ところが、旅の途上で国民党に徴用されてしまい、大砲を牽かされることに。逃亡もかなわず、国民党惨敗の中、今度は人民解放軍の一員として大砲を牽いたり、芝居で兵士を慰問して表彰状までもらい、家に帰ります。家では戻った妻子が待っていましたが、老いた母はすでに亡く、幼い娘は高熱がもとで耳が聞こえなくなっていました。福貴から賭博で家屋敷をまきあげた友人は反動地主として処刑され、福貴と妻・家珍は家屋敷を持ったままであれば処刑されたのは自分たちだたかもしれないと、震えあがりつつ胸をなでおろします。 50年代、大躍進政策の中で、鍋も釜も供出して、人々は人民食堂で食事をとりますが、耳の聞こえない娘、鳳霞は子どもたちにいじめられ、それをかばうのは、福貴の留守中に生まれた弟息子の有慶。しかし福貴は他の子をいじめるとして有慶を理解せず、ようやく和解したときに有慶は突然の事故死。その原因を作ったのはかつての影絵芝居時代の福貴の相棒、現在は区長になった春生でした。謝り償いたいとする春生を家珍は許さず、春生は去っていきます。 60年代、文革がはじまると、影絵人形は旧文化として批判され焼却を迫られます。やがて起こる娘鳳霞と造反派隊長で片足が不自由な二喜との縁談、心配されたものの幸せな結婚をする2人、ところが文革による...

NO.105  喜歓你ー恋するシェフの最強レシピ

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監督:許宏宇(デレク・ホイ)       プロデュース:陳可辛                  (ピーター・チャン) 出演:金城武  周冬雨    楊佑寧  林志玲   2017 中国・香港  106分 前回に引き続き、明るく楽しく、おしゃれな現代中国映画をご紹介します。いいオジサンになっちゃった金城武と、コメディエンヌ力全開(身の軽さも!)の周冬雨の「お料理」ラブコメ。原作は藍白色の小説『終于等到你』です。 ヒロイン顧勝男(周冬雨・「勝男」って男の子みたいだけれど、中国では女の子の名前なんですね。男を凌駕せよっていう願い?)は上海の大きなホテルの料理人。料理の腕はなかなかだけれど、台湾版yahooの紹介記事によれば「魚干女性格的超級俠女,生活迷糊加上白痴」な女性。総支配人の程子謙(楊佑寧)とひそかな関係にありましたが、彼に捨てられ、落ち込み怒りハチャメチャに。 このホテルの買収に乗り込んでくるのが国際ホテル財団のボス陸晋(金城武)。これも味や好みにはうるさいが食事は一人でするものと信じているような、傲慢な、しかしやり手という男。勝男と陸晋は最初からそれとは知らずに偶然出会い互いに猛反発。彼はホテルの内外を視察し、料理も試食しますが、どの料理人の料理も気に入らず、ただ勝男の料理のみ喜びます。彼女が作ったものとは知らずにその料理にほれ込むという、まあ定番的な展開です。陸晋が、お気に入りの料理人が勝男だと知るまでが前段、そして二人の仲がなかなかユニークな形で発展していくのが中段、後半になると休暇を終えて戻ってきた7年来のお抱え料理人(林志玲)が現れ、さらなる展開に。 見どころ ①陸晋が上海出張のスーツケースにぎっしり詰め込んでいるのは「出前一丁」。こだわりの即席めん調理をします(これはプロデュースをしたピーター・チャンのこだわりなんだそう…、私は最初あの「出前一丁」の映画、としてこの映画の噂をききました)。 ②実は、昨年11月この映画のロケ地見学ちょっとだけしました。場所は上海・淮海中路のY字路に建つ、とあるマンション。写真をのせますので映画のどこに出て来るかご確認ください。 ...

NO.104  52Hzのラブソング

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監督:魏徳聖                      出演:林忠諭( 宇宙人 osmos people ・小玉) 莊鵑瑛(元綿花糖・小球) 舒米恩(トーテム・スミン) 陳米非(小男孩楽團・ミッ フィ) 林慶台 趙詠華 張榕榕  范逸臣 田中千絵   2017 台湾  109分 今回ご紹介するのは、『海角七号 君想う、国境の南』『セデック・バレ』の監督、『KANO~1931年海の向こうの甲子園』のプロデューサーとしておなじみの台湾のヒット・メーカー、魏徳聖監督が6年ぶりにメガホンをとった話題作です。撮る作品ごとに色合いが違う魏映画ですが、過去の3作は台湾と日本の歴史的な事件や関係の上に立つ物語という共通性がありました。でも、今回は、そういう意味ではまったく、全然違った味わい!…現代の台湾の都会を舞台に、ヴァレンタインデイの1日、恋人のいない花屋のオーナー女性と、注文を受けたチョコレートが、自分が想いをよせる女性からその恋人に贈られるものだと知りながら配達するパン職人。配達車の接触事故からこの日行動をともにすることになった2人と、彼がひそかに愛する、その女性・その長年の恋人など、周辺の人々をからめ、オリジナル17曲を配したおとぎ話のようなカラフル・ポップな色合いのミュージカル・エンターテイメントです。  メインキャストは台湾でも有名なバンドやユニットの若い実力派ミュージシャンたち。さらに『セデックバレ』や『天空からの招待状』ですばらしい歌声を聞かせた林慶台(本業は牧師さん)、ベテラン歌手の趙詠華などを配して、聞きごたえ見ごたえのある楽しい(話の中身はちょっと切ないけれど)作品にしあがっています。映画のオリジナル楽曲の作詞は厳云農、作曲は李正帆、李王若涵(ジェニファー・ジョン・リー)、台湾ポップスを代表する黄金チーム。それに出演者たちが提供した曲も含まれています。題名の「52Hz(ヘルツ)」はこの周波数の音を発するのは世界で1頭だけというクジラの発する音の周波数。他のクジラとは周波数が違うのでコミュニケーションが取れず、大海をさまよう淋しいクジラと、登場人物たちを重ねているというわけでしょう。  日本初映は2017年春の大阪国際映画祭。その年末には東京でも劇場公開されたものです。年末お忙しい時期ですが、どうぞ心の洗濯?を。気楽に?お楽...

NO.103 長江 愛の詩(長江圖)

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監督:楊超  撮影:李屏賓  出演:秦昊  辛芷蕾  王宏偉 2016 中国  115分      今回は名匠・李屏賓のカメラで、上海から上流まで全長 6300 キロ、長江の姿を堪能していただこうと思います。悠久の大河・長江ですが、 2009 年三峡ダムが完成し、中国社会の急激な経済発展のもと、その姿は大きく変貌しました。映画はそんな長江を上海からさかのぼっていく貨物船の船長を主人公に、人も景色もあますところなく描き出します。                **************  高淳は長江で荷を運ぶ貨物船広徳号の船長。都会に出ていましたが、父の死後、後を継いで船に乗り込むことになりました。違法な荷物の運搬を請け負って上海から長江をさかのぼる船旅に出る高淳。オンボロ船の広徳号はときに故障して止まってしまいますが、あるとき機関室で父が残した?手書きの詩集がみつかります。するとそれに伴って船はゆっくりと動き始める…「長江圖」と題された詩集に導かれるように、彼は長江をさかのぼっていきます。詩集には船の停泊地である南京、銅陵、武漢、宜昌と順次地名が書かれていますが、それぞれの地に着くたびに高淳は一人の女性と遭遇することに気がつきます。同じ長江に浮かぶ船に乗り込んでいる船員として、沿岸の町のの娼婦として、ダム建設の余波で捨て去られ荒廃した村にたたずむ女性として、会うたびに彼女、陸安は姿を変え、しかもだんだんと若返っていくようでもある。謎の女性に高淳は恋します。しかし三峡ダムを越えたあたりで彼女はふっつり姿を消し…いくつかのミステリアスな事件もからみますが、謎の解明よりは人物の感情を中心に描いた、幻想的な物語ですので、筋を追ったり論理性を求めると「わけがわからない」という感じになりそうです。陸安は最後に姿を現しますが、さあ、彼女は何だったのか…「長江の精」だったのだという説については監督自身が「否定はしないが、単純な説だ」と論評しています。つまり、見る人によっていかようにも解釈ができる物語であり登場人物だということでしょう。  **************** 楊超監督は3年かけて7回の脚本改訂、長江を上り下りしてロケハン、準備をしたとか。全体では60日の撮影期間中40日は長江の船上で。寒い時...