NO.109 29歳問題(29+1)
監督:彭秀慧(キーレン・バン)
出演:周秀娜(クリッシー・チョ ウ)
鄭欣宣(ジョイス・チェン)
2017 香港 111分
9月も、8月に引き続き香港映画をもう1本。
こちらは、デモで人々が民主化を求める現在の香港からは少し離れて2005年を舞台に、まもなく30歳を迎えようとする2人の若い女性を描きます。
ヒロイン・クリスティ(若君=ヨックン)は勤め先では昇進、長年付き合っている恋人もいて、周囲がうらやむような充実した暮らしを送っているのですが、実は仕事のプレッシャー、彼氏とのすれ違い、実家の父の認知症?、そしておしゃれに暮らしているマンションの部屋の突然の水漏れと家主からの立ち退き要求など悩みも多く、精神的には、かならずしも穏やかで心楽しいというわけにはいきません。
家主の世話で1ヶ月、仮住まいすることになったのは、パリに旅行中という女性ティンロ(天楽)の留守宅。レコード店の勤めをやめて旅立ったというティンロの部屋の壁には、写真をコラージュした大きなエッフェル塔、80年代香港のレコードコレクションなどが目を引き、クリスティの部屋とは大違いの女の子らしい小物に満ちた庶民的な雰囲気。住人が楽しんで暮らしている様子があふれています。この部屋で、クリスティはティンロの「自伝」と称する日記をみつけて読み始めますが、それによると2人の同年同月同日の生まれ、ということでクリスティはティンロに興味を抱きます。
映画は、この部屋でのクリスティの暮らしを描きながら、パリに旅立ったティンロの秘密があきらかになっていき、クリスティが新しい自分を見つめ直すという展開です。
邦題は『29歳問題』ですが原題は『29+1』でむしろ30歳を迎えようとする年ごろを主眼に、女性が自分の生き方の確立をはかろうとする転機を描いた作品です。
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作者、キーレン・バンは1975年生まれ。2005年から13年間にわたり、この
『29+1』を舞台劇として作り、自らヨックンとティンロの2役を演じてきています。再演をかさねて香港では10回、100公演ほど、そのほかに北京や、マカオなどでも上演されました。映画では対照的な雰囲気のクリスティとティンロですが、1人で演じるとこれはこれで面白く、ダンスなど身体的なパフォーマンスもたっぷり、しかもヨックンに扮したキーレンが観客に語りかけアドリブ的なやり取りもしながら作り上げていく舞台作法のうまさはすばらしく…。昨年新宿ピカデリーで、映像化された劇場版の『29+1』が1日だけ上映されましたが、当日挨拶に来た彼女自身の気さくな観客サービスも印象的でした。
映画版『29歳問題』も、さまざまな映画祭で好評上映され、2017年大阪アジアン映画祭では観客賞を受賞しました。
この監督は返還前のマカオを舞台にした『イザベラ』(パン・ホーチョン監督2006 日本公開は2011年)の脚本も書いています。こちらもパン・ホーチョン作品にしては(?)叙情あふれる印象的な作品です。
この監督は返還前のマカオを舞台にした『イザベラ』(パン・ホーチョン監督2006 日本公開は2011年)の脚本も書いています。こちらもパン・ホーチョン作品にしては(?)叙情あふれる印象的な作品です。
もう1つ、『29歳問題』には、往年の香港エンターテイメントへの愛がたっぷり。
9月が誕生月のレスリー・チャンの歌『由零開始』が、繰り返される「0から出発しよう」というセリフとともに、テーマ曲としてたっぷり聞けます! またレスリー主演のかつてのTVドラマ『落日のパリ』、王家衛『花様年華』や 、BEYOND、レオン・ライなども語られ、登場し香港好きの中年以上にとっては郷愁をさそわれるような作品になっています。
多摩中「特別講座」受講の皆様のご参加もお待ちしています。
第109回上映会では、以下のとおり、この作品をご紹介します。
参加お申込みは 多摩中教室掲示板、または xiaolin091@gmail.com にご連絡を(当日朝9時まで)
日時 2019年 9月 14日土12:15~
場所:立川・中華五十番3F 042-522-7472
費用:1050円(昼食代)
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